【補助金活用】建築GX・DX推進事業を徹底解説!省エネとBIM/LCA活用で未来を拓く
はじめに
2025年4月より、原則として全ての新築建築物に対して省エネ基準への適合が義務化されました。これは建築業界にとって、環境性能への意識を一層高め、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを加速させる大きな転換期です。しかし、この変化に対応するためには、「具体的に何から手をつければ良いのか」「新たな技術導入や基準適合のための初期投資が負担だ」といった課題を感じている専門家やオーナーの方々も少なくないでしょう。
この記事では、そのような課題解決の一助となる国土交通省の強力な支援策**「建築GX・DX推進事業」**について、その概要から具体的な活用方法までを徹底解説します。本事業は、建築物の省エネ化(GX:グリーン・トランスフォーメーション)と、BIM(Building Information Modeling)活用による生産性向上(DX:デジタル・トランスフォーメーション)を一体的に後押しするものです。この機会に制度への理解を深め、未来の建築を形作るための一歩を踏み出しましょう。
建築GX・DX推進事業とは? – GXとDXを一体推進する国の支援
建築GX・DX推進事業は、建築分野におけるカーボンニュートラルの実現(GX)と、デジタル技術の活用を通じた生産性・品質の向上(DX)を同時に加速させることを目的とした国土交通省の補助事業です。具体的には、建築物のライフサイクル全体でのCO2排出量削減(LCA:ライフサイクルアセスメント)の取り組みを促進し、建築BIMの普及と活用を強力に支援します。
この事業は、大きく分けて**「BIM活用型」と「LCA実施型」**の2つの支援の柱で構成されています。BIMモデルを作成した上でLCAを実施する場合には、両方の要件を満たすことで、双方の補助を受けることが可能です。
BIM活用型事業:生産性向上とデータ連携を強力にサポート
BIM活用型事業は、建築BIMの導入とその効果的な活用を支援することで、設計から施工、さらには維持管理に至る建築ライフサイクル全体の生産性向上と効率化を目指すものです。
補助の対象となるプロジェクトと事業者
- 対象建築物: 耐火建築物や準耐火建築物等であり、かつ省エネ基準に適合している必要があります。共同住宅の場合は、土砂災害特別警戒区域外等であることも要件となります。
- 対象事業者: 設計または施工を行う元請事業者等や、そのプロジェクトに参加する下請事業者等(協力事業者)です。申請は元請事業者等が代表して行いますが、補助金は実際に費用を負担した各事業者に交付されます。
BIM活用で受けられる補助の内容
補助の対象となるのは、BIMの活用に伴う「掛かり増し費用」です。主な経費と補助率は以下の通りです。
- BIMライセンス等費: BIMソフトウェア利用料、関連機器のリース費、CDE(共通データ環境)構築・利用費など。
- BIMコーディネーター等費: BIMコーディネーターやBIMマネージャーの人件費・委託費、BIM講習費用など。協力事業者のBIM環境整備委託料や調整人件費も対象(各事業者上限100万円)。
- BIMモデラー費: BIMモデル作成に係る人件費(条件あり)、高度活用や維持管理BIMモデル作成費(発注者提供時)、BIMマネージャーサポートのモデラー委託費など(事業者あたり合計上限1,000万円)。
これらの経費に対し、補助率は1/2です。補助限度額は建築物の延べ面積に応じて設定されています。BIMモデルを作成し、かつLCAを実施する場合は、LCA実施型の補助要件を満たすことでLCA関連費用も加算されます。
補助を受けるための主な要件
- 下請事業者等へのBIM導入支援(2社以上)。
- 元請・下請共に「BIM活用事業者登録制度」へ登録し、「BIM活用推進計画」を策定・3年間の活用状況報告。
- 維持管理に資するBIMデータの整備。
- 大規模新築プロジェクトにおける国が定めるBIMモデルの活用。
事業は代表事業者登録から始まり、プロジェクトごとに交付申請、事業完了後の実績報告を経て補助金が交付されます。
LCA実施型事業:建築物のLCCO2を見える化し、脱炭素化を促進
LCA実施型事業は、建築物のライフサイクル全体でのCO2排出量(LCCO2)を算定・評価することにより、建築分野の省エネ化・脱炭素化(GX)の取り組みを具体的に推進することを目的としています。
LCA実施で受けられる補助の内容
補助対象は、LCAの実施に要する費用です。
- LCA算定に要する費用: LCA算定に係る人件費(外部委託費の人件費相当分も含む)。
- CO2原単位等策定に要する費用: 独自にCO2原単位等を策定する場合の人件費、データベース利用費、第三者検証費用、公開費用、算定ツール利用料など。
補助率は定額で、補助上限額は、BIMモデルを作成せずにLCAを行う場合は1件あたり650万円、BIMモデルを作成した上でLCAを行う場合は1件あたり500万円です。さらに、LCA算定に必要なCO2原単位等を策定する場合、1原単位につき400万円が加算されます(1事業者あたりの原単位策定加算上限は1,000万円)。
補助を受けるための主な要件
- 対象建築物は非住宅または共同住宅(新築、増改築、修繕等)。共同住宅は土砂災害特別警戒区域外等の要件あり。
- 基本設計完了時、実施設計完了時(着工時)、竣工時のいずれか、または複数段階で算定。
- 算定結果を国土交通省等へ報告(匿名処理の上で公表)。国土交通省等の調査への協力。
- 資材製造・施工・使用・解体段階の5区分で算定可能なツールを使用。
- CO2原単位等を策定する場合は、当該建築物のLCA算定に活用し、完了実績報告までに公開。
事業者登録後、対象建築物や費用の詳細を登録し交付申請を行い、事業完了後に算定結果等を報告します。
GX・DX推進事業活用のためのチェックリストと成功のコツ
本事業を効果的に活用するために、以下のポイントを押さえて計画的に進めましょう。
- 自社のGX/DX戦略との連携: 補助金獲得だけでなく、中長期的な経営戦略として位置づける。
- プロジェクトの適格性確認: 建築物の種類、省エネ基準適合状況、所在地等の要件を確認。
- 最適な活用タイプの選択: BIM活用、LCA実施、または両方の組み合わせを検討。
- 体制整備: BIMマネージャー、LCA担当者等の専門人材育成や外部リソース確保。
- 協力会社との連携強化: BIM活用型では下請事業者への支援が鍵。
- 早期の登録・申請: 補助対象期間の起点となるため、準備が整い次第速やかに。
- 完了実績報告の準備: 事業期間中から必要書類・データを整理。
- 継続的な取り組み: BIM活用型では事業完了後3年間の報告義務を念頭に置く。
より詳細な最新情報は、国土交通省の関連ウェブサイト等でご確認ください。
まとめ
2025年4月からの省エネ基準適合義務化は、建築業界にとって避けては通れない課題であると同時に、技術革新と持続可能な社会貢献への大きなチャンスです。「建築GX・DX推進事業」は、この変革期において企業の競争力を高め、未来志向の建築を実現するための強力なエンジンとなり得ます。
BIM活用による設計・施工・維持管理の劇的な生産性向上、そしてLCA実施による建築物の環境性能の「見える化」とLCCO2削減への具体的な道筋。これらは、今後の建築プロジェクトにおいて不可欠な要素です。この貴重な補助金制度を最大限に活用し、初期投資のハードルを下げ、GXとDXを力強く推進していきましょう。未来を築くための行動は、今ここから始まります。