非住宅建築の省エネ計算、もう迷わない!室用途・外皮入力の疑問を解決するQ&Aガイド(2025年4月義務化対応)
2025年4月から、原則として全ての建築物で省エネ基準への適合が義務化されます。特に非住宅建築物の設計に携わる皆様にとって、エネルギー消費性能計算プログラムを用いた評価は不可欠です。しかし、「この室用途はどれを選べば?」「複雑な外壁や窓の入力方法は?」といった疑問から、入力作業で手が止まってしまうことはありませんか?
この記事では、非住宅建築物の省エネ計算プログラム入力において、特に迷いやすい「室用途の選択」と「外皮情報の入力」に関するよくある疑問をQ&A形式で分かりやすく解説します。最後までお読みいただければ、入力の迷いが解消され、計算業務をスムーズに進めるヒントが得られるはずです。
省エネ計算で迷わない!「室用途」の賢い選び方Q&A
エネルギー消費性能計算プログラムでは、選択した「室用途」に応じて標準使用条件や計算対象設備が自動設定されるため、適切な選択が非常に重要です。
Q1: 主に食堂として使いますが、時々会議室にもなる部屋。室用途はどちら?
A1: このような場合は「主たる用途」で選択します。年間を通じて最も長い時間、または最も頻繁に使用される用途を選びましょう。今回の例では「食堂」が適切と考えられます。
Q2: 共同住宅のエントランスや廊下など共用部の室用途は?
A2: まず、告示本文中の表に記載されている共同住宅の共用部用途から選択します。該当がない場合は、告示別表第二の非住宅建築物の室用途から、最も近いものを選びます。
Q3: 建築基準法上は事務室ですが、実際は物品の仕分け作業を行う部屋。室用途も「事務所等・事務室」で良い?
A3: 建築基準法などの用途区分だけでなく、プログラムが参照する「標準室使用条件一覧」を考慮することが重要です。使用時間、発熱量、人員密度などが実態に近い室用途を選びましょう。例えば、物品仕分け作業室であれば、物販店舗等の「荷さばき室」や「更衣室又は倉庫」などが該当しないか確認してみてください。
Q4: 室用途を入力したら「不正な値」とエラーが出ました。
A4: 入力した室用途の名称がプログラムで認識できない可能性があります。エネルギー消費性能計算プログラム(非住宅版)の入力マニュアルに掲載されている「建物用途・室用途の一覧」を確認し、正確な名称で入力し直してください。
Q5: 選択した室用途で計算対象外の設備がある場合や、逆に計算対象設備が実際にはない場合は?
A5: 各室用途で計算対象とされる設備を全て計算する必要はありません。計算対象設備が実際には設置されていない場合、様式1「⑥計算対象室」の欄は空欄にします。
一方、選択した室用途で計算対象とならない設備(例:計算対象外の換気設備)をプログラム上で計算することはできません。主要な設備を計算に含めたい場合は、その設備が計算可能な別の室用途を選択し直す必要があります。
正確な「外皮」入力で計算精度アップ!Q&A
建物の外皮(外壁、窓、屋根、床など)の情報は、エネルギー消費量に大きく影響します。正確な入力が評価の精度を高めます。
Q1: 地面に接する土間床は、一次エネルギー消費量計算で入力不要?
A1: いいえ、必要です。一次エネルギー消費量計算では、地面に接する床や壁、屋根など、全ての外皮の入力が求められます。土間床も熱損失・熱取得に影響するため、様式2-2(外壁構成入力シート)などで仕様を入力してください。
Q2: ガラス張りカーテンウォールの場合、「外壁構成入力シート」と「窓仕様入力シート」はどう使い分ける?
A2: 建具表に寸法や仕様が明確なガラス部分やスパンドレル(非透明部)は開口部として「様式2-3(空調)窓仕様入力シート」に。建具表に記載がないスパンドレルのボードなど、外壁と見なす部材は「様式2-2(空調)外壁構成入力シート」に入力します。詳細は入力マニュアルで確認しましょう。
Q3: 光を通さない鋼製建具の開口部の入力は?
A3: 光を通さない建具でも、建具表に寸法や仕様が記載されていれば開口部として「様式2-3(空調)窓仕様入力シート」に入力します(例:鋼製ドア)。記載がなければ外壁として「様式2-2(空調)外壁構成入力シート」です。カーテンウォールと同様、建具表での扱いが基準となります。
Q4: 一つの外壁に仕様や寸法の異なる窓が複数ある場合、どう入力する?
A4: まず「様式2-3(空調)窓仕様入力シ-ト」で各窓仕様に異なる名称(例:南面窓-タイプA、南面窓-タイプB)を付けて入力します。次に「様式2-4(空調)外皮仕様入力シ-ト」で、当該外壁を窓タイプごとに複数行に分けて入力。各行の外皮面積はその行の窓面積を下回らず、かつ複数行の合計面積が元の外皮面積と一致するように調整します。
Q5: 同一方位(例:南面)に仕様の異なる窓が複数ある場合は?
A5: 「様式2-4(空調)外皮仕様入力シ-ト」の「②方位」は重複しても問題ありません。仕様の異なる窓ごとに、同じ方位(例: 南)で複数行入力してください。各行でそれぞれの窓仕様を選択し、面積を入力します。
Q6: 既存窓の内側に内窓を設置した場合の入力は?
A6: 外窓と内窓を一体として一つの開口部と見なします。内窓を含めた窓全体の仕様(熱貫流率、日射熱取得率など)を算出し、「様式2-3(空調)窓仕様入力シート」にその性能値を入力してください。
まとめ
2025年4月からの省エネ基準適合義務化に向け、非住宅建築物のエネルギー消費性能計算はますます重要になります。特に「室用途」の適切な選択と、「外皮」情報の正確な入力は、計算結果の信頼性を高め、基準適合を確実にするための鍵となります。
今回ご紹介したQ&Aが、皆様の省エネ計算業務の一助となれば幸いです。これらのポイントを押さえ、よりスムーズで正確な設計業務を進めていきましょう。さらに詳細な情報については、エネルギー消費性能計算プログラムの入力マニュアルなども合わせてご確認ください。